禁煙ファシズム発動(大事な人に押し付ける)


今日ここに書く文章は、あまり面白くありません。そのうえちょっと説教くさいです。でも、私はみるみる大事なことを忘れていってしまうので、忘れないうちに書き記します。押し付けがましさ全開で、文章の構成も校正も気にせずに書きます。おかしな点があったらメールで教えてください。

私はずっと煙草を吸っていましたが、今ではもう吸いません。なぜもう吸わないのかというと、肺がやられて死にかけ、治療をしたからです。その時点で周りの大事な人たちに「煙草やめなよ」とは言いませんでした。それまでの自分が、「煙草やめなよ」と言ってくれる人をなんだか意見の押し付けみたいで鬱陶しく感じていたからです。自分に対しても自業自得だと思うところもありました。
でも、病院に通院・入院するようになって考えが変わりました。病院で知り合い、くだらない話をしたり、ゲームボーイを貸してくれる*1ようになった友達達がみるみる、

  • ガンが脳に転移し、完全におかしな人になった
  • 夜の間、痛みに苦しみ、かみ締めた自分の奥歯をすべて砕いてしまった
  • 笑わせたら、笑いと共に鼻から血しぶきが変な特撮みたいに1メートル近く吹き上がったりするのを見た*2
  • もう死にそうな人に「まだ大丈夫」だと言わなければならなかった
  • 入院してきた時点で笑い上戸だった人が、二週間で一切笑えなくなった

リアルにこんな感じのことに遭遇すると、自分の心がじょじょに死んでいくような気分になって、人の自由を尊重するのもどうかなと考えも変わってきました。周りの人たちにはひとりファシズムで接しようと決意した、その流れを書くことにします。


 いいかげん期

私が入院した時の自覚症状としては、空咳と胸の痛みでした。咳と同時に血がちょっと出たりしていたので、その時点でもうダメかなとなと思いました。どうしてそう思ったかというと、肺がんだと見当がついてから、病気について検索をかけた結果、肺がんになった場合、5年後に生き残れる確率(五年生存率)は、他の臓器に発生したガンと比較して、膵臓癌と同じぐらいに驚くほど低いことが分かったからです。肺がんは、かなり容赦なく命を奪ってゆくタイプです。
わかりづらい比喩になりますが、宇宙戦争という映画に登場するトライポッドという悪いロボットに攻撃された人間が生き残れるぐらいの確率です(かなり低いということを表現したいだけ)

肺がんの5年生存率(治療開始から5年間生存している割合)は25〜30%といわれています。

医者に肺がんをについて説明してもらっている面談中に、「肺がんの生存率が25〜30%はちょっと厳しいから、もうちょっとがんばって確率を上げてくれませんか」と真顔ながらちょっとした冗談として先生に訊ねました。先生はまじめな顔で「10%ぐらいは上がりますね、患者さんの治したいという強い思いで」と答えてくれました。確かに気の効いた冗談で返せるような場面じゃなかったので、先生には酷なシチュエーションでした。気を使ってくれた、やさしさによる意味のない数字だけれども、もしかして……とかなり気になる数字でした。
入院する時点で、私の考えていたこと

  • 自業自得だからしかたがないか(あきらめ)
  • やるだけ治療して、ダメだと思ったらモルヒネ(イメージとして)ドーンともらいたい
  • お金どうするか(保険と支払いの心配)
  • 仕事どうするか(ボチボチやるか)
  • あまり深刻にならずに、普段どおりにいこう

こんな感じでした。実際に、思ったとおりに生活していたのですが、ふとした時に考え始めました。「なんで煙草なんか吸ってたんやろ…」と。それまでに「煙草はやめときな」などと言われ、うんうん、分かってる分かってる。でも、自分で自分のリスク分かっているからほっといてくれよ、うっとおしいなと考えていました。でも、リスクを本当には分かっていませんでした。毎日毎日「死ぬかも死ぬかも」と考える日々は、本当に「お先真っ暗」です。昔の自分に、「煙草をやめられないなのに、自分と周りに言い訳ばっかりするなよ」と怒りたいです。でも、過去を消せる消しゴムはないからなぁ…


 分かったこと

私は、煙草がやめられなかったくせに

  • 携帯灰皿を持って、マナーを守っている事をアピール(人のいる場所や、灰皿のない所でも吸わずにはいられなかった)
  • ひと言「吸っていい?」と同席した人に断ってから煙草に火をつけていた(「吸っていい?」と訊かれ、よっぽどのことがない限りは断りづらい事に気づかない無神経さがあった)
  • 一週間吸わずに過ごした事があったから、本気でやめようと思ったらやめられると考える(やめられないのに、それを自分で認めなかった)
  • 別にそれほど強く長生きしたいと思っていないと考える(リスクに対して向き合うことを根本から拒否していた)
  • 駅の喫煙コーナーで煙草を吸っていた(煙草を吸ったばかりの人の口がどれほどくさい口臭に感じるかは、止めるまで分かりませんでした。わきがの人が自分のにおいに気づかないのと同じでした)

 決定打

煙草を完全にやめて、周りの人にもやめるように「禁煙ファシズム」化しようと思ったきっかけは、病院で見た、一人のお父さんでした。この話は他の人が当人と話した内容も含まれているので、完全に正確な話ではありません。
大学生で髪の毛が鬼太郎みたいな男の子が、肺が悪いゾーンの病室に入院してきましたが、その子のお母さんはしょっちゅう姿を見るのですが、お父さんの姿はなかなか見れないという話が、肺セブン*3の中で出ました。「まだ学生で、同居してたらもっと男親も来るだろ*4」という言葉と同じ事を、鬼太郎の母親も思ったようで、鬼太郎のお見舞いに初めてやってきた父親を廊下で「もうちょっとお見舞いに来てもいいんじゃないか」と責めると、軽く切れた父親が「お見舞いなんかしても鬼太郎が治るわけないから無駄だ」と叫び始めました。
(私はここで通りがかりました。部屋の入り口付近で喧嘩している夫婦をどうしたもんか考え中)
歩くのもしんどそうな鬼太郎がベッドから立ち上がり、廊下に出てきて「恥ずかしいから静かにしてくれよ」と父親を諌めると、父親がまた真っ赤な顔をして「平気そうな顔をしやがって!俺に殺されると思っとるんちゃうんか?でも、この前医者の説明きいたら、原因は俺の煙草じゃないって言ったぞ。お前が勝手に病気になったんやって。俺は関係ない」と、今までリアルに聞いた中でNo1の人でなし発言で、私の胸にも突き刺さったぐらいだから、奥さんや鬼太郎の胸にはどれほど刺さったのかと。鬼太郎はあきれた顔で黙り込み、奥さんは「あんたはなんでそんな事が言えるん…」とおかしいぐらいに貧乏ゆすりみたいな変な動きを強めていました。そして「うぁーうぁー」と、子どもが泣くのとは全く違う大きな声、大人が本気で泣く声で泣き出しました。私は大人がそれほどの勢いで泣くのを見たのは初めてで、どうすればよいかまったく分かりませんでした。泣きながらお母さんが「鬼太郎がこんなことになってもタバコをやめられへんなんて、情けなくて情けなくて」とののしりました。お父さんは居づらくなったのか、廊下から逃げるように居なくなり、鬼太郎は死人みたいな表情で、へたり込むみたいに座り、それはまるで悪夢みたいな景色でした。

お父さんはヘビー・スモーカーで、家でずっと吸い続けていたそうです。鬼太郎とお母さんはノンスモーカー。そして鬼太郎はステージⅢ程度の肺がん、まず治らない。副流煙でがんにかかる確率ははっきりしないし、喫煙している人が肺がんに必ずかかるわけでもありません。でも、息子はがんになって死ぬ運命だし、医者がいくら気休めに煙草だけががんにかかる要因じゃないと言ったところで、お父さんが煙草で息子を殺したように感じます。煙草会社がどれだけ喫煙の危険性をラベルに貼ろうが、まさか自分が実際に病気にかかって死ぬとは思ってもみません。「自分はリスクを理解して吸っている」つもりでいたはずの私も、本当の意味でリスクについて考えてはいませんでした。鬼太郎一家のように、自分じゃない家族が肺がんになった場合、煙草を吸うときは換気扇を回していたり、台所で吸うようにしていたからと自分を納得させることができるでしょうか。もし吸っている本人が病気になったら、「本人が好きで吸っていたのだから仕方がない」と簡単に割り切れるでしょうか。たぶん、もしもっと強く言ってやめさせておけば良かったのじゃないか。心が弱いから禁煙に成功できなかったのだから、病院に通わせてカウンセリングを受けさせればうまくいったのではないかとif/もしもをどうしても考えてしまうのではないでしょうか。

鬼太郎は若かったからか進行が早く、ずーっとゼイゼイ言っていてしょっちゅうナースコールを押していました。おとなしく寝ている間はちいさな母親が横で不安そうな顔でずーっと見ていましたが、さほど時間がたたないうちにどっかの部屋に移され、死にました。最後はずっと喉にチューブを差していたそうです。

肺がやられて入院してくる場合、非常によくなって退院してゆくケースが少ないです。本当に少ない。病院の中のレイアウトがよく変わります。


多くの煙草をスパスパ吸う人はきっとその人の趣味や主義で煙草を大事にしていて、重要なリラックス法なのだと思います。なんらかの理由*5があると思うし、それはそれで他者に迷惑をかけない限り、自由な権利です。しかし、私の周りの大事な人たちには、嫌がられてもやめさせたいと思うようになりました。いい年をした大人が、夜になっても死ぬのが恐ろしくて眠れずに涙を流している場面を見たからです。奥さんが肺がんになった理由が自分だと看病の傍らカウンセリングを受けているおじさんを見たからです*6。まわりも地獄でした。



文章がめちゃくちゃで、ちょっと内容が陰鬱なのでこれ以降、煙草についての文章は書きません。とにかく、知っている人には煙草をやめてほしいと思いました。かなりの強引さで強制したいです。どんな死に方がいいというのはありませんが、肺がんはやめておいたほうがいい。死に方が厳しすぎる。たいしてスマートに痛みを飛ばす治療もなく(適当に意識をぼんやりさせて死なすぐらい)、治療も、かなりの確率で進行を遅らせるため*7の手術が多い。ある程度の知識がないと、自分の状態と、求める治療について選別することも難しい*8
治癒率が低いからか、そこらじゅうでわけの分からない草や虫で作った薬を売りつけあったり、「地上で最強の女王蜂から作った蜂蜜エキス」に二十万円払っている人もいました(現地で達人が蜂を一年中追いかけているらしい)。サイエントロジーに入信している人もいました*9。お金を払い、好きで吸っていたものによってそんなことになるなんて、そこまでひどいことになるとはみんな考えていなかったに違いありません。別におなかがふくれるわけでもないし、もし煙草をやめていたら…

なんとなく煙草がなかなかやめられないから、自分の弱さをごまかして、100%病気になるわけじゃないと思うんだよな…死にかけてから、きつい煙草の煙を吸うと、吐き気がするようになりました。それでご飯が食べられません。かなりの繊細っぷりですが、これもショックの強い今だけだと思います。時間が経つとなんでも薄れて忘れてしまうから、ここにメモとしてバラっと文章を置きます。


(追記)
誤解を招くような表現が多かったため、追記することにしました。
自分の感じたことを 私が知っている人と、私のことを知ってる人に伝えられたら、この文章を書いた目的は果たせると思いました。しかし、間違ったとらえられかたをするのは気持ちが悪いので、簡単に思うところを書きました。


私は禁煙ファシズムというものを私なりにある程度理解して、喫煙を理由に他者の人権に対して圧迫するのはおかしいなと考えます。そして、人の自由や権利を尊重することは大事だと思います。それを頭では理解しているから、世の中に対してとか、大勢に対して働きかけようとは全く思っていません。
しかしながら、自分や周りの人の体がやられ、データ上、煙草とガンは関係ないとは思えなくなりました。自分の体におけるデータによると遺伝的要素は皆無で、発病率100%です。病院で知り合った人たちだから当然ですが、煙草との因果関係は90%ぐらいでした。煙草を吸ったらいきなりガンにかかるぐらいの勢いです。自分データに基づくと、親しい人にはすぐに煙草をやめさせなければと思いました。しかし、客観的にこれは偏ったデータだと分かっているので、親しい人以外にはおかしいと思われることを頭に入れて「禁煙ファシズム」というタイトルをつけたのです。


「理論的・客観的に考えたら、めちゃくちゃな論理かもしれないけれど、こういったことを見て感じたから親しい人には煙草をやめなよと伝えたい」という意味で「禁煙ファシズム発動」と書きました。ここは「禁煙ジャイアニズム」とも置き換えることができます。本気で喫煙者全体に対して排除・弾圧するつもりは一切ありません。
小谷野さんに対しても、ここで私が喫煙者全体に対する非難を始めたのではないということを理解していただきたいと思いました。
「私の周りの大事な人たちには、嫌がられてもやめさせたいと思うようになりました」というのが正直な私の気持ちです。*10それ以外の人については、今の私には考える余裕がありません。



参考図書:

禁煙ファシズムと戦う (ベスト新書)

禁煙ファシズムと戦う (ベスト新書)

読むだけで絶対やめられる禁煙セラピー [セラピーシリーズ] (ムックセレクト)

読むだけで絶対やめられる禁煙セラピー [セラピーシリーズ] (ムックセレクト)

*1:重要

*2:血しぶきの人はそっから二週間ぐらいで死んだ

*3:肺に気化した薬を送る機械を使用するときに仲良くなった人々。どんどん数が減るがそれはまたの話

*4:気持ち親がお見舞いに来ない私に対して配慮された言葉

*5:健康は気にしないとか、仕事上どうしても必要とか

*6:奥さんが死んだら自殺するんじゃないかとの噂

*7:腫瘍の縮小を狙ってはいるのだが

*8:地方・医局の系統によって驚くほどの方針のバラつきがある

*9:話を聞いたら面白かったけど、その人は当然医者とけんかして勝手に退院。ちょっとして自宅で急変して死んだ

*10:親しい間柄で「プライバシーは尊重するけれど、秘密を持つのは許さないと感じるような矛盾した感情」