春/卒業

梅田駅から阪急電車に乗車しようと待っていました。すると私の後ろにハカマ姿の女の子二人連れが並んで小声でなにか話しています。ところがどうも様子がおかしいのです。

「アンタ、きっと私のことなんか忘れてしまうやろ」
「ううん、絶対忘れないっちゅうの」
「いいや、忘れるね。アンタ私の誕生日も忘れたもん」
「それはそれ。あんとき謝ったやんか。しつこいなあ」
「東京に行ったら、コンパとかサークルとかそんなんやろ」
「しつこい!」

こんな会話を繰り広げていました。あまりに気になったのでさりげなく振り返ると、アイラインが溶け、デビルマンのようにほっぺたに二本の筋をつけたよく似た二人。私は心の中で「二人の友情がうまく続くといいな」と変な恵比寿さんのような顔で心の中で微笑みました。卒業シーズンが来ると、その度に自分の時の事を考えるのですが、あんまり思い出せません。ぼんやりとしていて…
私の心は黒くないと言い聞かせた一日でした。