ふなずしがやってきた。ヤア!ヤア!ヤア!(無表情で)


滋賀には琵琶湖があります。琵琶湖にはフナがいます。フナあるところにフナずしあり。それで今日、私の家にはおみやげのふなずしがやってきました。土産として私に手渡されました。あまり物事にちゅうちょしない性質の私なのですが、体調面、気持ちの面の両面に強い不安を覚えました。それぐらいインパクトのある食べ物なのです。これを食べることができれば、健康へとさらに一歩踏み出せる。強い力を手に入れることができる(等価交換)などと考えていました。

前々から、ふなずし(なれ寿司)というものがあることは知っていました。ふなずしの作り方を調べてみると、





  1. 鮒のうろこをはがし、口蓋、エラ、三つ骨等を取り除き、口から腹ワタや浮き袋を抜き取ります。 メスフナの卵だけは つぶさないように残します。(このつぼ抜き作業の技術を会得するには何年もの練習と精進を必要とします)
  2. 桶の底に塩を敷き、鮒の頭と腹に塩を付け、一匹づつ敷きつめます。同じ要領で塩漬けにした鮒を1ケ月以上桶に寝かします。
  3. この塩漬けにした鮒を水洗いし、陰干しにして水切りします。
  4. 7月〜8月の真夏に精米した近江米のご飯を、雑菌の多い空気にさらし、鮒の口からそのご飯を詰め込みます。樽の底にもご飯を敷き詰め、2.の塩漬けの要領と同じようにご飯を詰め込まれた鮒を敷き詰めます。ご飯を敷き詰め鮒を並べ、又ご飯を敷き詰め鮒を並べ・・・重しをして約3ヶ月程樽に寝かし発酵させます。
  5. しかしここで折角発酵したご飯を取り除きます。そして再び新しいご飯で同じ要領で、ご飯と鮒を敷き詰め又半年以上樽に寝かして発酵させます。やがて酵母菌と乳酸菌だけになって「鮒寿司」の誕生ということになります。

とてもありがたい。日本古来から現代まで伝わる、上質の発酵食です。私は岐阜県で暮らしていたとき、鮒の甘露煮、ゴリ、ウグイ、モロコ、ナマズ、ウナギ、オイカワ、コイ、サワガニなどを好んで食べる家で過ごし、大概のものに免疫があります。しかし、ふなずしの木箱を空けた瞬間に部屋に充満した、発酵というか、「夏の日、お弁当のおかずを残したまま部活が長引き、その後友達の家で遊び、見つかって怒られないようそーっと忍び込むようにして入り込んだ家の台所、水を張った桶の中にせめてそっと弁当箱を浸しておこう、食べ残しは捨てようと蓋を開けた瞬間に思わず吸い込んでしまったにおい」に似ている、まぎれもない腐敗臭は胸の奥に変な生唾を分泌しました。
人が好んで食べてきたものや、ある地方特産の食べ物を小ばかにする態度*1というものを許せない、過剰に食に対してフェアであろうとするタイプの私*2ですが、現実とのギャップに負けそうになりました。

とりあえず、皿の上にふな本体(異様なほどに毒々しくオレンジに輝く卵入り)とお米(というかまるで見た目はポテトサラダのようにべちょっとしたもの)を並べ、「高級品だし、せっかくだからバクッといこう」とご飯と共に口に入れました。口の中で広がる、からすみや塩辛にも似たにおい。苦しくなって咳き込むと、ご飯部分が鼻腔の中に拡散して大変でした。涙と鼻水。どうやらご飯部分(というかすでにご飯粒は溶けてない)は食べないようです。白い部分(元:米)を丁寧に取り除いてみると、多少しょっぱいものの、まずまず食べられました。お茶でちょっと流し込むようにはしましたが、今日は、「ふなずしを食べたよ」ということを誰かに報告できるのではと文字を綴りました。まだ食べたことがない人は「大人になる旅」として食べられると良いと思います。古代食に対するリスペクト、受け入れにくい味の物に対するスマートな対応など、できる大人になるために必要なものはすべてふなずしが教えてくれます。


他のお土産として、「えび豆」という、甘い煮豆の中に川エビが入っているもの、鮒の甘露煮はとてもおいしくいただきました。滋賀バンザイ。


発酵してうまみ・酸味が発生する事は理解できるのですが、卵・身が鮮やかなオレンジになる理由が分かりません。もしよろしければ教えてください。

*1:ex:納豆を不必要にけなしたりする態度

*2:虫を食べたりする民族が大好きです