小説家をみつけたら/Finding-Atsuster

昨日、「小説家になる」と冗談だか本気だか分からないことを言い出した友達から、予想もしない分量の文字が届きました。「これでデビューできると思う。読ませてやるかわりに漢字とおかしいところ直せ(命令口調)」と書かれていました。タイトルが「かなしみのコンパ、中村区の涙、セントラルタワーの夢」という、なんとも判断つきかねるもの。
本気だったんだ……ああ、この人前々からわかっていたけれどもアレだなぁ。そう思うと同時に、やったことがなくてもとりあえず自信満々にやってのける力を眩しく楽しく感じました。
何の気なしに「DeepLove」を携帯で書いてヒットさせたYoshiの話を面白おかしく聞かせたところから始まりました。
「会社ではおもしろいと評判」「意外と賢いと言われる」「業務日誌を書くのが一番早いし、みんながまわし読みする」となぜかライバル心を燃やしてる…
それを聞いて、その業務日誌を見せてと私が頼むと、「情報保護の観点からはだめなんだけどなぁ」といちおう渋りながらも見せる気満々でした。
彼が仕事終わりに、十分というタイムリミットを切って書いている日誌は、事務的な事柄が簡単に記述されているだけで、後は会った人の特徴や、仕事の感触、時間潰しをした場所まで書かれていました。それが不思議な事に面白いし、商談をした人の姿がよく分かるのです。見ていないのに、見た気になれるというか。誤字はかなり多いのですが、ふざけた言葉が書かれているわけでもないのに気持ちよく面白いのです。

大人になってずいぶん経つのに、コイツだけ、どうしてへこまされずに奇跡的に守られてやってこれたんだろうと感動しました。
ある程度の社会人テクを身に付けているとはいえ、まさか、学生の時とまったく同じスタンスのままだなんて。携帯電話と、ワードをちょっと使って、誤字だらけでコンパの話……いったいどこに向かおうというのか。でも、久しぶりにお腹の底からクツクツ笑える話なんだけど、明らかに日記なんだよなぁ。

スラムに暮らすバスケット好きの少年ジャマールは、仲間から浮かないようにと勉強ができることをひた隠しにしていた。そんな生活の中で、部屋から一歩も出ない年配の白人の存在に気づく。その老人は、著名な作品を発表してから謎の沈黙を続けている幻の作家、フォレスターだった(「フラニーとゾーイ」「大工よビーム(梁)」で有名なサリンジャーがモデル)

気持ちいい後味の、やさしいおとぎ話。お兄ちゃん役でバスタ・ライムズが出演しています。