失われたサラミを求めいざ行かん

サラミ・ブリンツァへの道のりは険しく



なんとか大阪で手に入らないでしょうか。できるだけ安く。しかもうまく…

おいしいサラミが食べたい。それは贅沢でしょうか。いや、贅沢ではありません。
頑張っている人間にご褒美をあげても、きっとバチは当たりません。ご褒美をあげられる立場になったというのもうれしいことです。


ちょっと小太りの気前の良い親戚のおじさんのような気持ちで、仕事をしながら一級建築士の勉強を続けている人の姿を見て、「ヨシヨシ、よくやっとるな」と言いたいことと、私に食べたいものをリクエストする時に、うるんだ瞳で“夢のようにおいしかったサラミがもう一度だけ食べたい…”と表現された、それを自分の舌で味わいたいという気持ちが私の中でふくらみ、芽吹き、はじける音が聞こえました。


軽い気持ちで、私はサラミを購入するため「阪急の地下で一回買った」「周りが白カビで覆われている」というヒントのみで、「行ってみれば見つけられるだろう」と、足取りも軽やかに阪急百貨店の地下へと向かっていました。その時の私は、サラミを買うということがこれほど困難なものだとは思ってもいませんでした。

見つかりませんでした。さんざん阪急の中を巡回した後、職員に質問すると「あー。あれはフェスタの時だけ店を出してたんやな。もう来る予定はないですわ…」そう答えられ、それどうしようもないなと引き下がりました。その晩遅くに電話をかけ、「もう売ってへんよ。ごめんな」と伝え、「しかたないね…」と二人でショボーンとしてしまいました。


翌日の昼間、私の胸にモヤモヤしたものが生まれていること気がつきました。なんだか苦しくて、切なくなります。そんな日々などもう忘ていました。はっきりと認めるには勇気が必要でしたが、これは久しぶりに感じた「恋しくて」ではないでしょうか。
昼間にもかかわらず、トイレの個室にこもってメールを打ちました。「おいしかったサラミの正式名称は分かる?」すぐに送信です。件名は「至急:サラミ」でした。返信が来るまでに一時間はかかったでしょうか。ずっとメールの着信を心待ちにしていました。「Re:確かじゃないけど、サラミ・ブリンタ」名前が分かれば、インターネットでなんとかなる。私には、希望の光が見えました。