さくら


さくらの花がようやく大阪でも開き始めた。遠目にながめても木の周りがうっすらとピンク色になりつつある。分厚いコートもクリーニングに出し、次の冬までひと休みしてもらった。
環状線に乗り、大阪駅から鶴橋方面へと向かう途中、ゆったりとした右カーブの終わりあたりに差しかかったあたり、右手に大阪城公園が見えてくる。公園の整備を進めているのか、大掛かりな工事をしているため、シートやフェンスで遮られ、さくらの真下で宴会ができそうになかった。
あれではバイトができないじゃないか。
そう「ぼろぼろな駝鳥」な感じで心配になった。
私が大学生だった時、この時期は花見の席とりのバイトが楽しみだった。朝に電話をもらって、淀屋橋や本町にある会社から依頼を受け、夕方の宴会が始まるまで指定された面積のシートを張り、ただぼんやりと座って待てばよかった。ただそれだけ。一日で一万円もらえ、依頼を受けた会社の人からビールやつまみももらえるし、夕方になるにつれてすこし寒いけれど、ぼんやりと本を読んでいられた。待っている間、周りで私と同じように席とりをしている人たちとたわいもない世間話を交わす。入社したての人や、町内会の花見をすることになり、くじで席とり係を引いてしまった人。みんなどこへいってしまったんだろう。
あれでは花見の席とりができないじゃないか。