チューブライフ

鼻からチューブを挿し、胸の奥に薬入りの蒸気を送る*1という治療を、最近よくやっています。私はあまり鼻に物を入れるのが得意ではないので*2、ウエウエいいながらなんとかこなしています。
昨日、いつものようにウエウエ言いながら鼻にチューブを挿していたところ、隣に小学生がニンテンドッグスをやりながら座っていました。心なしか、私を蔑んでいるような目つきです。普段だったら涼しい顔で気にしないのですが、子どもの将来のため*3に何も言葉をかけられていないのに話しかけました。
「体のつくりは人それぞれだから、こうやって薬を入れるのも得意な人、苦手な人がいるんだよ」
やさしい、ほんとうにやさしい声調で語りかけました。私は子どもじみてはいるけれど大人だから。
小学生はリアルに「ヘッ!」という音を発してから私に言いました。
「誰だってこんなもん得意なわけあるかさ。痛かったりしてしんどそうにしとっても誰もよろこばんやろ。本当に我慢できへんとこまでは無理して平気そうな顔しときや」
私はなんだか、ひどく自分が小さくなったように感じました。小学生の首には前に挿管した痕がありました*4。私はほめてあげたかったのですが、うまい言葉が浮かばず「ちいさな巨人だな!」と言いました。するとちょっと恥ずかしそうに笑い、「前にここでいまと同じこと言われたんや」そう告白してくれました。
二人で同じ方向を向いて座りながら、子どもに教えてもらってばっかりだなと思いました。
夕方の空はファンタオレンジみたいなオレンジ色で、それを眺めながら鼻にチューブ挿して一時間。とぼけた格好で夏の日は長いなと話をしていました。子どもの名前、聞いてないや。

*1:その後の施術のために薬投入、痰を取り除いて炎症を抑える

*2:誰でもそうですが

*3:かつDSが羨ましかった

*4:カニューレという恐ろしいものについて興奮し、オーバーに話していました