連載小説 かなしみのコンパ

小説第一作です。よろしくお願いします。


男は営業をがんばっていた。先輩の手助けをして、サポート業務も、お昼ご飯を一緒に食べたりもして、先輩たちに貢献していたのだ。
仕事で役に立っているだけにとどまらず、先輩はしょっちゅう男に「コンパの話ないか」「誰かいい子紹介してよ」と言うのだ。
できない。年をとって、あんまりおもしろくない先輩を紹介して僕の評判を下げるわけにはいかないのだ。確かに先輩たちは給料をたくさんもらっている。しかし、おもしろくないし、そんな場所をセッティングしても僕にうまみはないのだ。

ルルルールルルー

電話が鳴った!仕事中にもかかわらず、別の現場に行った先輩だ!僕は顔を見せるだけの得意先だったので、「どうも、よろしくおねがいします、寒くなってきているから気をつけてくださいね(愛されるためのテクニック)」と声をかけ、その場所から出てからかけなおした。

「てつしくん、悪いけれど明日の夜空いてる?」

仕事の話ではないらしい。僕は頭をコンピューターで回転させ、もにょもにょと「明日はーわかりませんねー」と断った。すると、先輩は驚きの言葉を言った。「明日、コンパでてつしくんがいないと困るんだよね、写真見せて、君が来るって言ったらー」
僕の心は先輩をすごい勢いで血が出るほど殴りつけていた。でも電話ではにこにこした感じで「急にですからね、困るんです」と言った。その後、けちんぼの先輩とは思えない黄金のひと言が出た。

「明日の飲み食い代はタダだし、バイト代として俺らから一万づつやるからさ、頼むよ」

僕の目が弗マークになった。チャリーンと音がした。そして僕は答えた

「まかせてください。用事はなんとかします。がんばるから期待してください」

そして話は始まった!


その日、ちょっと遅めに会社に戻ると先輩は仕事が終わったのに僕を待っていた。部長のびょっといいほうの椅子に後ろ前で座り、くるくる回っている先輩を見たらがっかりした(どうしてかはわからない)。「てつしくん、ご飯を食べに行こう」とすこし恥ずかしそうに誘ってくる。なんだか気持ち悪かった。

断る事もできない流れだったので、名駅の外側(新幹線のほう)にあるビアハウスに入る。先輩(すこし寒い季節になると、外に出たときに肩から湯気が出るので「湯気先輩」)は頭がおかしいのか、「ビール飲むと熱くなるから外で」と言い出し、店員に「やめたほうがいいですよ、寒くて誰も外にいませんよ」と言われ、なんとか室内で飲むことになった。

「明日ね、結婚相手を見つけようと思う」

顔を見たけれど、冗談を言っているふうではなかった。本気というか、せっぱ詰まっておかしくなっているかと思った。「明日来る子達は、適齢期で、結婚願望が強いんだ。だから大丈夫」と自信満々。自分になにか言い聞かせているような雰囲気で話していた。「それでね、てつしくんには、アシストをしてほしいんだ。そのために金を払う。だからてつしくんがいい目を見たら許さないからね」地獄の番人のような顔で見られた。

一緒にコンパに参加するメンバーは僕、湯気先輩(38歳、ちょっと太くて引っ込み思案)、髪が薄い先輩(かなり髪が薄い、内弁慶でしもねた好き)の三人で、相手は十八銀行(仮名)の社員さん二人と、そこに来ている派遣社員さん一人。コンパの相手は、湯気先輩の同級生が銀行と付き合いがあって、出会いがないからセッティングしようとやさしい人(たぶん本当にいい人だと思う)ががんばってくれたらしい。

「前もって注意していくけれど、薄毛さぁ、いつもハゲネタ繰り出すらぁ、でも、お前がそれに乗っかったらアイツハンパないほど切れるし、傷つくぜ、気をつけろ」(ビール、生中を一杯飲んだらちょっと酔って気が大きくなったらしい)

嫌な話を聞いた。ということは、明日は薄毛先輩はハゲネタで髪の毛そよそよとか、バサァって(毛が少ないために中途半端な)髪の毛を右から左に投げる漫才師のネタの真似をやるけど、僕が笑ったり、なにか言ったら憎まれるということだ。「それだったらどうしたらいいんですか」と聞いたら、湯気先輩は

「どうしようもないんら。聞こえなかったふりして、食べ物か飲み物口に入れておけ。それでアイツ気をつけないと、飲みすぎると泣くぞ」

そんな注意書きをたくさん教えられ、気が重くなりました。その日のお勘定は六千円ちょっと。おごってもらったけれどあんまりありがたみはありませんでした。


    寝て、次の日働いて、その夜


コンパの会場は天狗だった!先輩たちはちょっとケチったのか!?それは分からないけれど、会社から僕、湯気、薄毛先輩の三人で近くまで行った。名駅の正面からトヨタビルに渡ったほうの店だ。店に近づいたら、先輩が「なあ、ちょっと先に入って行って、相手がヤバくないか確かめてきて」とおかしな事を言った。どれだけひどくても大人だったら逃げたらアカン!という意味を込めて、「勇気・元気・やる気が一番大事ですよ」と説教したら、ちょっと落ち込んだ先輩が「ハイ・・・」ということを聞きました。


予約してあった席に着くと、もう相手三人は席に座っていました。三人とも「オトナ」っていう感じで、「お招きいただきありがとうございました」なんて、かわいい声で言ってくれて、僕はちょっとポーッしました。横を見たら、先輩二人もポーットしています。

「お・お・お待たせいたしました!ただいま参りました」と薄毛先輩のほうがすでに最高潮!といった笑顔で挨拶してました。僕と湯気先輩は遅れて挨拶。
まあ、とりあえず乾杯です。相手方はきれいなりつこさん(仮名)、おもしろいあきこさん(仮名)、より目さん(仮名)でした。ビールを飲んだら、わかってない薄毛先輩がいきなり銀行のオンラインシステムとか、業務統合の話を始めました。女の子たちはキョトーン、僕もポカーンですが、先輩方二人は乗りに乗って話しています。ここはお金をもらってサポートしているから、先輩の足を軽くけって、耳元で「おじょうさんたちを退屈させていませんか」と内緒話しました。次の瞬間、僕の言った事に反応したのかしないのか、薄毛先輩がいきなり立ち上がりました。

「席換えターイム!パフパフ(実際にパフパフと言った)」

さすがの湯気先輩もこれはまずいと思ったのか、僕の顔を見て「ナントカシテクレヨ」という顔してました。女の人三人は凍りついたみたいな顔で、悲しそうに見えました。

僕が必死のアシストで「いきなり席替えって、気が早いよ!」と気楽な感じで突っ込みました。すると、薄毛先輩は小声でもない声で「でも、今のままだとより目さんとはなせないよ」と真顔で言いました。僕に殴りかかってきそうな本気の顔でした。お金もらってもやっぱこんなのは嫌だなと思いましたが、いまさら帰ることもできず、女の子に「先輩、いつもこんな感じでふざけるんですよ、真顔でねぇ」とフォローです。女の人の表情が穏やかになりました。するとまた湯気先輩が僕のわき腹をつつき「お前がいいかっこうせずに、お前の役をオレにやらして」と難しい事を言います。でも、先輩は萎縮してなにも話さないからそれは無理です。

だんだん腹が立ってきたけれど、仕事の兼ね合いもあるからなんにも言いませんでした。ビールを一回お代わりしたら、りつこさんが会話をリードしてくれ始めました。りつこさんは僕の目を見て、なんとなく「同士よ!鳩よ!」みたいな顔をして、がんばりましょうとエールの交換をしました。

りつこさん「いい先輩方にかこまれてうれしいですね」湯気「そうですね、こいつ恵まれてますよ(真に受けた!)」
僕「きれいな人ばかりの職場でうらやましいです」より目さん「私はダメだけどね・・・(落ち込んだふう)」湯気「がんばらないと!」
「そんな大学出ているんですか、すごーい(湯気先輩は早稲田大学を出ているのが自慢)」湯気「たいしたことないよ、頭が悪くても入れるのさ(雰囲気を最悪にした)」

罰ゲームのようにちぐはぐな会話がいったりきたり。そのうち、全然会話に加わらずにビールをガンガン飲んでいた薄毛先輩のおでこが赤くなり、ガソリン注入!パワー100パーセント!とばかりに動き始めました。地獄の薄毛劇場の幕が上がりました。

「ほれったー、まま、あみがなくってもれー」不思議な、アジアの言葉っぽい音を喉からギュッと出し、右手で頭をぐぐっとかきあげて笑い出しました。そして、

「髪の毛薄くてもねー、性欲はそんなにないんですよ。薄まりすぎのカルピスっていうか!」
「意外とね、こう見えても髪の毛のことは全然気にしてないんですよ、よかったらアタシのこと「ハゲちゃん」って呼んでもいいし、頭を触ってもいいですよ!気にしてないから!」
加藤茶のズラよりはフサフサしてるでしょ?」
「年寄りに見えるけれど不惑前、まだまっさらの新品です」

横で聞いていて泣きたくなるほどの言葉を連発。濁った目で自分の冗談への反応をじっと見つめています。なぜか、僕の隣に座っている湯気先輩は、僕の太ももの付け根をぎゅっと握ってくるし(ちょっと気持ち悪い)、不安になると隣の人に掴まる悪い癖が出ています。でも、それが仕方ないなと思えるぐらいに怖い感じでした。

薄毛先輩が「コラァ、席替えタイムはどうしたぁ」と怒りを必死で抑えた声でつぶやきます。楽しい雰囲気はゼロ、先輩二人はなんだかもうダメな感じで、どうしようもありませんでした。気づくと、今まで(ほぼ)なんにも話をしてこなかったあきこさんが、右前から足を伸ばして、僕の膝をチョコチョコ触ってきます。湯気先輩は足の付け根を痛いほど握ってきて、薄毛先輩はダイレクトにぼくのわき腹を突付いて、みんなに聞こえてしまう大きい声で「おれぇ、早く女の横に座りたい、なんとかして仲良くなる」と心の声を外に大解放です。

りつこさんは同情の目を僕に注ぎ、より目さんは一心不乱にメールをうっていると思いきや、ボンブリスというテトリスのまがい物を一生懸命にやっています。より目さんもかなり飛んだ感じの性格。

みんなに触られるのが嫌になってきたので、苦し紛れに立ち上がって「宴もたけなわとなってまいりまして」と言ってみて、全然楽しくも何にもないことに気づいて僕は立ってひとりで爆笑してしまい、「よっぱらっちゃって」「セルフ漫才大会かよ(意味はよく分からない)」などと言われ、涙が出そうなほど切なくなりました。


続きを書くので本当によろしくお願いします。
あと、僕はあざけり先生の影響とかはまったく受けていません。漢字がひどく間違っているのを直してくれるのだけありがとう。
先輩というか文章のやり方はツヤ子先生とヘイポップさんを手本にしたいと思っています。

ツヤ子先生(絵も天才的にうまい)
http://blog4.fc2.com/tuyako/

ヘイポップさん(すごいたくさん小説を書いている)
http://d.hatena.ne.jp/hey11pop/