友達のお参り/ヘビーな接待

ちょっと前に亡くなった友達の家に寄ってきました。葬式には私の都合で出られなかったので、ご両親に挨拶というか、微妙な用事で行ってきました。前もってご家族には電話で連絡してあったのですが、友達の家についたら予想をはるかに超える大歓待。「来てくれてありがとう」「寒いのにありがとう」と過分に喜んでくれました。なんだか申し訳ない気分。「どうしても食べていきなさい、ご飯は用意したから」と豪華な夕食を主賓席に座り、友達が昔に使っていた茶碗やお箸で食べました。メニューは刺身、鶏肉のから揚げ、ポテトサラダ。机に乗り切らないほどでした。
その場ではやはり友達の話がメインでもりあがったのですが、私の知っている友達と、家族の知っている友達の印象の違いに驚かされました。なんとなく、話をしていると友達がどっかに遊びに行っていないだけみたいな話しぶり。友達が付き合った相手の話を熱心に聞かれました。友達が親に話していない事、そういった個人的な話をすることに抵抗があったのですが、ご両親は、友達がたいして好きな人とも付き合えずに死んでしまったのではないか、内弁慶であまり上手に気持ちを伝えられずにいたのではないかと、友達がどれだけ家ではいい顔をしていたのかとあきれるほどの変な心配をしていたので、「大丈夫です、じゅうぶんに相手はいましたし、どちらかといえば積極的なタイプでしたよ」と話をしました。ほんとうにまずい部分についてはかなりきれいにコーティングして話したので大丈夫です。親の目っていうのは子どもは何歳になっても子どもなんですね。

私の許容量の二倍の量はご飯を食べ、お風呂に入りなさい(湯冷めするからと回避)や、なぜか変な流れで友達のお父さんの足ツボマッサージをやってみたり(お父さん絶叫、机を蹴ってお母さんに怒られる)、かつて味わった事がないほどの引き止められ工作(ケーキとリンゴ、あとみかんと芋けんぴ、コーヒーと紅茶)で、うれしいやらかなしいやら、なんとも言えない気分になりました。こんなにもてたことは最近ありません。
友達の家を訪れた本当の理由は、もし死んだら、家にある画集と電子辞書、外付けハードディスクをもらってくれ*1という約束のためだったのですが、どうにも言い出せなくて、玄関に入って仏間と居間ぐらいにしか行けず、また行く事になりました。
名残惜しいけれどと腰をあげ、なんとか振り切って帰ろうとしたら、これもってけ、あれもってけとやさしい攻撃を加えられました。私は柿があまり好きではないのですが、パッと見るからにすばらしい形の柿を持たしてくれ、好きではないと断る事がなんとなく出来ず、なぜか私にお小遣いをくれようとする友達のお父さん(ちょっと酔っ払っている)、それは困るので必死で固辞する私の小競り合い……
結局、帰るときに右手にタマネギ、春菊(いい香り)、柿がたっぷり入ったビニール袋を提げ、肩が比喩ではなく外れそうな思いをしながら友達の家から帰るとき、私の姿を寒そうに玄関に立って見送ってくれました。二人並んで、手を振ってくれました。
なんとも切ないような気分で歩いているときに、パンパンに詰まったお土産袋の中から、舗装した道路の上に柿が落ちて、角がつぶれたようになりました。それを見たとき、なんだかわからないけれど「もうだめだ」というような気分になりました。潰れたところを服の裾で拭いたけれど、どうしようもないような気分は動きませんでした。泣くとかじゃすまない、全部終わりみたいな気分。
そうしてたら、電話が鳴って、友達のお父さんが「今日は来てくれてありがとう、迷惑になってなければいいけど、懲りずにまた来てな」と言ってくれ、電話のそばにいるお母さんの声が遠くから「きちんと食べて健康でって言っといて」と伝言しているのが聞こえ、そのままの言葉がもう一度お父さんの声で聞こえてきました。私が行ったことで本当に喜んでくれたけれど、行ったことで子どもが死んだ事を思い出すから行ったほうがいいのか行かないほうがいいのか全然わからなくなりました。
ほんとうにいい両親を持って友達は良かったなと感じました。今日は犬に噛まれたり、トイレにはまりかけたりもしました。久しぶりに色々とあって、なにかしら考えるような夜です。


そしてゆっくりとお風呂で温まっているときに、私はまったく俳句に詳しくないけれど、いきなり
したたかに 柿くうて淋し 忌日哉 
こんな句が頭に浮かびました。有名な句かなと思ってGoogleで検索をかけたけれど、なにも該当しませんでした。もしかしたらいきなり句が詠めた?
たぶん、有名な句を覚え間違いしているんだろうなぁ……柿、したたかになんか食べられないし。グラッセにでもするか!どちらかといえば

くえないくえず せつない冬の日 立ちつくす

こんな感じだけれど、うまくはできない。5・7・5完全無視ですね。
句の先生、オカザキなをさんよろしくお願いします。
あんまり明るい話ではないけれど、嫌だったり暗い話ではありません。友達がいい両親を持ってて、その両親が私にメチャメチャ親切にしてくれた、どちらかというと「うれしい話」になると思います。

追記:オカザキさんは(リンク)かばんという「短歌」のグループに参加されているのであって、5・7・5の「俳句」の専門ではありませんでした。それでも短歌の事も分かる、違いの分かる人です。アドバイスを元に作り直してみました。

どてとてと 想いの代わりか 落下柿 泣けぬ私を 責めとるのかね

なぜか訛りました。

*1:プラス、ちょっとした手紙やまずいものの処分