チュッチュ

チュッチュ


この間、実家に帰っていちばん良かったことは、チュッチュという猫に逢えたことでした。チュッチュは20年近く生きている婆さん猫で、はじめてちゃんと飼った猫です。
チュッチュはより目で古風でムギワラというあまり見かけない種類の毛色で、そしてとにかく耐える女で幼稚園の頃のわたしの無茶なチュッチュへの遊びや扱いにも全く怒らず付き合ってくれていたし、小学校の頃のわたしの阿呆な行為からジャンガリアンハムスターを数匹体の上に乗せられたり目の前をハムスターが散歩しまくっても全く何もしなかったり(わたしはそれを見てともだちだと単に嬉しそうでした)。
インコを一日の半分以上、家の中で放し飼いしていたときも何もかわるところはなくて、インコに体にとまられまくったりしていたし、中学の時ハムスターがケージから脱走して1日経っても見つからず泣きまくった日の夜中にチュッチュは脱走ハムスターをくわえて部屋にきて鳴いて起こしてくれました。
そのハムスターは仮死状態になっていたので獣医に連れて行き説明すると獣医は驚いて、チュッチュが歯が刺さらないよう優しくくわえてきたということを教えてくれました。
ハムスターは目が巨大の阿呆がとりえの生き物なのでいきなり猫がやってきてくわえられたのがショックで仮死状態になったみたいでした。そのままショック死する可能性もあると言われたハムスターは家に帰って巣箱でしゃっくりみたいなのをしながら2日ほど引きこもると普通に復活し寿命で死にました。
今思うとほんとチュッチュへの扱いはひどかったんですが、チュッチュはわたしのことを子どものように思ってくれていて、髪をグルーミングしてくれたりお風呂に入っていると助けにきてくれたりどこまでもついてきてくれたり、メジロを殺してプレゼントしてくれたりしました。
チュッチュがおばあさんになってきた頃に、家にやってきたのが雌の子猫のちびくんとみんでした。優しいのに猫付き合いが苦手なチュッチュとも(特に女同士の付き合いが苦手)最初はうまくやっていたのですが、しばらくしてからちびくんとチュッチュが喧嘩をしてしまって、それ以来チュッチュはあまり家に帰ってこなくなり、帰ってきてもちびくんがいない間だけ家で過ごすようになり、だんだんそれもなくなってしまいご飯だけ食べにくるようになってしまいました。
そんな状態が何年もずーっと続いてチュッチュもその間に3軒の家からご飯と寝床をもらいつつうちにくる生活をしていたのですが、実家が立て替えをすると、チュッチュなりに完璧に違うと思ったのか家の庭で寝てたり、玄関から人を呼んだりすることは全く無くなってしまって全く家に寄り付かなくなってしまって、チュッチュに逢うにはチュッチュの3軒の家のひとつである隣の隣の家に行って待たないと逢えなくなってしまいました。



実家をでてひとり暮らしをはじめてから、母親と話す機会があるときはいつもチュッチュのことを聞いていたんですが、この間の実家に帰る前に少し母親と電話で話した際に母親が、ジンガ(実家のボーダーコリーの名)の散歩の時に土手のカラスノエンドウがいっぱい咲いているところの中にチュッチュが居たので何回も呼んだけど来なかった。散歩が終わってからつれて帰ろうと、帰り迎えに行ったけど居なくてそれから1週間以上経つけど誰もチュッチュを見かけてないと聞かされ、ああもうチュッチュは死んだんではないかなあけど死骸がないからそう思いたくないなあとそんなことをずっと思ったりしていたら姉に赤ちゃんが産まれて見に帰ることになり、赤ちゃんを見てだらだら過ごしているとチュッチュがきたという電話が隣の隣の人の家からかかってきて、飛び出して行くと超おばあさん顔になったムギワラのチュッチュが居てご飯を食べていました。
老動物痩せしていたり老動物毛していたり歯が全部抜けてなくなってました。歯がないので食事に時間がかかるけどがつがつ食べてて思ったより元気そうでした。グルーミングと耳掃除を時間をかけてたっぷりしました。家につれて帰ろうかと思ったけどチュッチュはしばらくするとどこかに行ってしまって、わたしも追わずに戻りました。
チュッチュが元気でありますように
チュッチュに逢えますように。


                           チュッチュ



posted by ikko. May 2005.(とてもいい文章だったので再録しました) ※去年の三月二十一日にチュッチュは老衰で死にました。