突然つやつやになる

二日前の朝、目が覚めた私は自分の肌がつやつやになっていることに気がついた。指先で肌をキュキュッとこするように触れてみると、まるでSK2のフェイスパックかコラーゲンを含む上等な豚の角煮を食べた翌日のようだった。なにもつやつやになる物を摂取していない上に寝不足で、体もとてもドンヨリと疲れていたのになぜか張りのある肌質になっていた。


私はああ今朝自分はつやつやだなと思ったけれど、つやつやの自分をそれほどいい状態だとは思えなかった。つやつやの持ち腐れだな…… ということが頭に浮かんだけれど、別に誰に伝えるわけでもなく、無駄につやつやしていました。


ベタ


サラダロールと麦茶とミルクで朝ごはんを食べ、その後にコーヒーを飲みぼんやりして仕事に出かけ、直行で向かった先で台風が来るの来ないのというどうでもよくないけれどそれほど真剣ではない調子で紙コップのコーヒーをはさんで話をし、それでは意見を今日は持ち帰りますとか適当にそれらしいことを言いつつ別れその帰り道にマクドナルドでアイスコーヒーのSとソフトツイスト*1をドライブスルーで購入して会社に行き事務所へと向かう途中で、かわいい女の人が私のところに駆け寄ってきて、「これ読んでください」と複雑に畳まれたメモか手紙のようなものを渡されました。

「困ります」と私は言いました。きっぱりと……。確かに言いました(強調)。しかし、もしこれがラブレター的なものじゃなく、彼女が作業している場所で、身近な人から執拗なセクハラを受けている、もしくは窃盗や物の横流し的な現場を目撃してどうすべきかわからない、もしくは仕事上のミスを告白……という場合もあるなとここで書いているほど細かくは考えませんでしたがそれっぽいことと、変に意識しすぎな感じでもよくないし、多少はエヘヘ困ったなといういやらしい感情もなきにしもあらずで、結局それほど押し問答もなくサラリと受け取りなぜか「すみません」と言って、事務所には戻らずにトイレに行きその手紙を困ったなと広げてみると、漢字とカタカナばかりで書かれた

朕惟フニ我カ皇祖……


という一文で始まっている文章でした。この文章に重なっていた紙にはこの文章を解説したものがあり*2、メールアドレスと電話番号、名前が書かれており、「わからない事があったらいつでもtelしてください」と手書きのメッセージもありました。


朕ってい言葉は高貴な人しか使えないものだよね…… と複雑な気持ちを抱えたまま事務所に戻ると、目ざとく私たちのやりとりを見つけた仲のいい男の子がはしゃぎながら「告白ですか!手紙ですか!」と言ってきたのですが、これを面白がって話したらリアルにちょっとしんどい目にあわせてしまう可能性があるし、私は決して許せると思えないよと低いトーンで軽くおどかして返答を聞かないまま席を立ち、給湯室でもらい物のコーヒーをいれているときに自分のほっぺたをそういえばつやつやだったんだなとすこし笑いながらという感じで触ってみたらもうつやつやしていなかったので中途半端な笑いは引っ込んでしぶい顔でコーヒーを飲みました。

*1:マックでのソフトクリーム商品名

*2:なんらかの勉強会で取ったノートもしくはルーズリーフのコピーだと思われます