人間っていいな街宣車

子供のころ、街宣車といえばだいたい軍歌か演歌を大音響で流していたけれど、何回か「日本むかし話」のエンディングを流しながら低速で走っていく街宣車を見たことがある。
街宣車は怖いものという考えがあったからそれほど近づかなかったけれど、何とはなしに自転車に乗っている小学生が一定の距離を置いて追走し始めて、それにつられて何台も何台も集まって、ちょっとしたハーメルンの笛吹き状態になっていた。

街宣車といえども赤信号では停まるので、そうすると自転車の群れもびっくりしながら停まったりしつつ、群れの中から街宣車に最短距離まで近寄れることを誇示しようとする子供も出てきたりして。

中が見えないようになっている街宣車の中から「あんまり近づくと危ないぞオラ!」的な若い兄ちゃんの声が聞こえてきたりしてきた。

結局、街宣車は駅の近くにあったそば屋さんの近くに停車して、周りを小学生が見守る中、飛び出してきたそば屋のおじちゃんに「うるせえ!ここにはあんたら関係ないやろ!」と怒鳴られ、「なんじゃワレは!!」といきりたつ若い兄ちゃんとつかみ合いぽくなっているところを、街宣車の奥から(その頃には自転車軍団は超至近距離に接近していて、街宣車の中に布団が置いてあったり、字のめっちゃ書いてある布を目にしていた)想像していたよりもずっと若く貧相な学生服みたいな服を着たちいさなおじさんが「まあまあ、シロウトさんに迷惑かけちゃいけないよ」とすごくもっともらしく若い兄ちゃんを止めていた。


今考えると、全部学生服みたいな服を着たちいさなおじさんがやらせていたんだろうし、「おしりを出した子一等賞」を流した意味もわからないし、謎とぼんやりしたおかしみしか残っていない。


街宣車は音楽を停めて、子供たちは家に散り散りに帰ったけれど、あれはいったいなんだったんだろう。同じような街宣車体験した人はいるのでしょうか