山の急斜面からからおじいさん

山の近くの一軒家に引越をして、家の近所にびっくりするぐらいに自然が残っている場所を発見しました。そこは近くに人家がバリバリあるのですが、細い道の両側に水田があり、その脇に急斜面の杉林、逆側には幹の太い広葉樹の森を持っています。ちょうど道路がうまいぐあいに交差していないため、まったく人の気配がない+森から染み出してくる水のために、とても冷たい清流的なドブが生まれています。
軽い気持ちで田んぼの脇を覗いてみると、まるでミニチュアの自然再現施設のようにウジャウジャと虫や水生昆虫の姿があって衝撃的。40センチぐらいの溝の中に、まず小さなフナ、ニホンドジョウ、タイコウチ、ミズスマシ、ミズカマキリ、アメンボ、ゲンゴロウ、ハゼみたいな魚、アカハライモリ、トノサマガエル、アマガエル、ウシガエル、モロコ、アメリカザリガニ、スッポン(死骸でしたが)、クサガメ、きれいなほうのカメ、ジムグリ、ヒルなどの姿が二十分ほどで見られました。



そうして田んぼの脇で溝を覗いていると、脇の急斜面(相当な角度)からキキーーーーキキキと甲高い軋むような音を立てながら、激しい勢いで道なんかない場所からおじいさんがすごい勢いで降下してきて、私のほうに向かって直進してきました。(ゲ、ここあのおじいさんの田んぼか。怒られるな…)と警戒していると、おじいさんは私に向かって前段も何もなく、「ここらにいる若いキツネは剥製で見るみたいにきれいですごいし山のほうに急にかけていくで。山から染み出してくる水があるからワサビでも作れるんじゃねえかっていわれるぐらいやけどあんなのめんどくさそうだよなぁ。朝の六時ぐらいならいつもラジオ体操をここら辺でしているから来るとええで」と言われ、近くの農業屋で買ったという田舎饅頭をくれながら、暑くなる前に仕事っていうか田んぼに水を入れて、帰りがけにビール飲んで帰ると最高やで。

という、いくら田舎でおじいさんだからといってそれはちょっと距離感を詰めるにしてもその距離感を縮めるのに2秒ほどというのはコチラのほうが心配かつ警戒してしまうほどでした。別れ際におじいさんは「ちょっと失礼をば」といいながら真正面でズボンのチャックをモサモサと開け、まるで無限大(∞)のマークを描くように、あまり勢いのないおしっこをすごく嬉しそうに私に向かってしていました。
そんなことがあった六月の話をここに記しておきます。